幽霊文字とは?JIS漢字に紛れ込んだ謎の文字たち

JIS漢字に含まれる典拠不明の漢字

幽霊文字とは、JIS漢字に含まれる典拠不明の漢字の総称です。この記事では、幽霊文字の概要や代表的な例、なぜ存在するのかについて解説します。

目次

幽霊文字とは

幽霊文字(ゆうれいもじ)とは、JIS基本漢字に含まれる典拠不明の漢字の総称であり、幽霊漢字や幽霊字とも呼ばれます。これらの文字は、1978年に制定されたJIS C 6226(後のJIS X 0208)において、6349字の漢字が規定された際に含まれましたが、典拠が明示されていなかったため、音義や使用例が不明な文字が存在することが指摘されました。そのため、辞書類に収録されながら実用例のない単語を意味する「幽霊語」をもじって「幽霊文字」と呼ばれるようになりました。

幽霊文字の調査と判明した事実

1997年のJIS規格改定時、原案作成委員会は、1978年の規格原案作成時に参照された文献を調査しました。この調査は芝野耕司・笹原宏之らが中心となって進められ、幽霊文字とされてきたものの多くは、地名などに実際に使われていた漢字であることが明らかになりました。たとえば「妛」は滋賀県の地名に由来することが突き止められています。

しかし、調査を経てもなお、12の漢字については典拠不明のまま残される結果となりました。これらは、原典が見つかったものの字書や用例で同定しきれない「典拠不詳」の文字と、原典も用例も一切たどれない「典拠不明・同定不能」の文字(「墸」「壥」)に大別されます。現在では、狭義の幽霊文字はこれら12文字、さらに最も狭い意味では出所がまったく不明な「彁」1文字のみを指すとされています。

なぜ幽霊文字が存在するのか

幽霊文字が存在する背景には、JIS漢字の選定時に典拠が明示されなかったことや、資料の写し間違い、誤認、誤写などが挙げられます。また、当時の資料の中には既に原典が存在しないものもあり、内容に不備が指摘されています。これらの要因が重なり、幽霊文字がJIS漢字に含まれることとなりました。

その典型が「妛」です。地名の版下を作る際、「山」と「女」を切り貼りして「𡚴」という字を作字したところ、貼り合わせた紙の境目にできた影がうっすらと横線のように写ってしまいました。これを一画と読み取って転記した結果、実在しない「妛」という文字が生まれたと考えられています。わずかな印刷上のズレが、規格に載る一文字を生み出してしまった好例といえます。

現在の扱いと影響

幽霊文字は既にUnicodeなどの国際規格に採用されており、これらの規格変更は互換性の問題を起こす可能性が高いため、幽霊文字の修正や削除は事実上不可能になっています。そのため、現在でも幽霊文字がデジタル環境で使用されることがあります。

典拠不明とされる12の幽霊文字

調査を経てもなお典拠が確認できず、狭義の幽霊文字として残った12文字と、その由来に関する主な説を一覧にまとめました。

文字 概要・由来
唯一、典拠不明とされる文字。「彊」の誤記とされる。
滋賀県犬上郡多賀町の地名「𡚴原(あけんばら)」に由来する。版下を切り貼りして作字した際、貼り合わせの境目にできた影を横画と見誤り、本来の「𡚴」に余分な一画が加わったものと推定される。幽霊文字が生まれた仕組みを示す代表例として知られる。
「栩」の誤写とみられる。
「杲(こう)」の誤認。群馬県の学校名が関係。
「橳」または「棬」の誤写とされる。
「橦」との混同・誤写と考えられる。
「新撰字鏡」にあるが、使用例不明。
「祢(しめすへん)」を衣偏と誤って記載。
典拠・用例ともに発見されておらず、同定が困難な文字。「㕓(廛)」の誤写とする説がある。
典拠・用例ともに発見されておらず、同定が困難な文字。「楮」の誤字とする説がある。
典拠・用例とも不明。誤記または異体字の誤収録と考えられる。
閏月を表す「閏」の異体字とされるが、使用例に乏しい。

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